この町に移り住んでから、そして気軽にアクセスできるようになった多摩サイ(多摩川サイクリングロード)で走り始めてから、はや11年あまりの時が流れ去った。多摩サイを走るといっても、レースを目指すというような高い目標を掲げていたわけではない。乗っているのは本格仕様のロードバイクではなくクロスバイクだし、未だ上流側から下流側まで全区間を走破できていない。万年初級者だと言われても仕方がないけれど、私の場合、目的はあくまでもささやかな逃避行とスナップ、そして健康維持である。そんな私ではあるが、今年こそは最果ての羽田空港まで走破を……と意気込んではいたのだ。いたのだが、とある事情により、今秋、某県の別の町に引っ越すことになってしまった。夢かなわず、多摩サイともこれでお別れ。いや、夢はしばらく保留にしておくだけだ。いずれこの多摩地区に舞い戻ってくるつもりなのだから。ともあれ、私にとって一区切りとなる今の時期、これまで多摩サイを走った中で脳裏に焼き付いた光景を思い出として少しずつアップしていきたい。
変わらないように見える多摩サイも、数年のスパンで見ると変化はそこかしこに見受けられる。たとえば、冒頭の写真。立川市営球場に近い区間だ。ここは道幅が狭く、おまけに両側には草が生い茂っていて見晴らしがよくなかった。そのおかげで、奇妙な寂寞感とローカル感が漂っており、一瞬、まったく別の世界に迷い込んだ気にさせられ、走るのに注意は必要だけど好きな道だった。しかし、数年前に大がかりな工事が行われ、道も拡張整備され、周囲の景観も一変してしまった。見晴らしがよくなり、とても走りやすくなった。それはありがたかったのだけど、今でもなお、ここを走っているとこの写真の光景が懐かしさを伴って脳裏に蘇ってくる。
下の写真は11年前の夏に撮ったもの。台風一過だったろうか、クリアな空気の中、雲と青空のコントラストが鮮やかで、雲が驚くほど近くに感じられ、怖さを覚えるほどだった。多摩サイで見上げた雲の中でもひときわ印象に残っている。