BELDEN 8470を買った話の続き。
スピーカーケーブルを8470に替えてひとまず音質向上のための散財はおしまい、にするはずだったのだけど、聴いているうちにまたまた不満が出てきてしまった。以前より全体的にパワフルにはなったものの、どうも高音側がまだ細い気がしてならない。8470の物理的な細さを見て頼りなさを覚えてしまったせいかもしれない。加えて、特に女性ボーカルのサ行の摩擦音が以前より耳につくようになった。俗に「サ行が刺さる」と言うらしい。この現象、もう少し高くて太いケーブルに買い替えれば解決するのだろうか。そう考え始めるとケーブルを交換したくてたまらなくなってきた。ヤフオクで落札したジャンパーケーブルがZONOTONE製なので、相性的にも同じメーカーのケーブルがいいだろう。でもなあ、ケーブルにそこまでお金を出すのもどうなのだろう。そんな自制も働いてしばらく迷っていたのだが、結局、同社の比較的お手頃な価格の6NSP-1500をヤフーの某ショップで購入してしまった。6メートルで5000円あまりしたのだが、PayPayポイントがけっこうたまっているのに気付いたことで、自制の箍があっけなく外れてしまった。
さっそく接続して聴いてみる。8470に比べて全体的に迫力が増しているのがわかった。特に高音側の細さ、頼りなさがほぼ消えている。8470に比べると、高音の透明感はそのままに、安定感がぐっと増した印象だ。小気味よさと歯切れの良さも増したような気がする。うん、満足。もうこの辺でいいだろう。さすがにこれ以上の高額ケーブルには手が出ないし、出したくはない。ケーブル探求はこれでおしまい。
取り外したBELDEN 8470は、デスクトップに移したONKYO 112NFXにつないでみた。いきなり歯切れ良く音が鳴り出したのでビックリ。112NFXに付属のケーブルより明らかに細いのだが、性能は優に上回っている。相性もあるのだろうか。112NFXと8470は良い組み合わせのように感じられたので、この組み合わせで聴くことに。その後、貯まっていた某ポイントで小型のスピーカー台を購入し、その上に112NFXを載せてみた。これまでより安定感が増したせいか、音もさらにクリアになった気がする。
これで、リビングとデスクトップの両方で以前よりずっといい音が聴けるようになった。ひとまずオーディオ周りのアップグレードは終了。他にも沼にはまっている趣味があるので、さすがにこれ以上深くオーディオの世界に足を踏み入れるわけにはいかない。
そういえば、これほどオーディオ関連で散財したことって過去にあっただろうか。記憶を探ってみると、20年、いやもう30年も前になるのか、AKAI(A&D)のGXコンポで洋楽を聴いていたことを思い出し、そういえばそうだったな、と懐かしくなった。あの当時の名だたる日本のオーディオメーカーの中からAKAIのシステムコンポを選んだのは、カセットデッキに定評があると聞いたからだった。その当時、ダビングしたいと思っていたカセットテープがたくさん手元にあったことから、ツインデッキ搭載のGXコンポを選んだのだと思う。AKAIのコンポとは、我ながら渋い選択をしたぜと悦に入っていた記憶がある。モデル名はもう忘れてしまったが、20万円はしただろうか。当時、就職して間もない自分にとってはとても思い切った買い物だった。バブルが崩壊する前のあの時代、贅を尽くした精悍なブラックの本体は「これぞメカ」という感じで購買意欲を大いにそそられた。スピーカーも大きく、存在感十分だった。あの大きいスピーカーで初めて聴いていた音の迫力たるや。
数年後、実家を出て一人暮らしを始めたときに、かさばるGXコンポは処分してしまった。今考えると実にもったいなかった! それ以降は賃貸生活の制約からVictorやONKYOのずっと小型のコンポでしか音楽を聴かなくなった。それでも特に不満も抱かなかったのに、昨年、久しく離れていた実家に戻ったとたん、性能の良い112NFXに物足りなさを覚えてしまったのは、古いレコードや大量のカセットテープ、処分せず唯一残っていたAKAIのレコードプレーヤーを収納の奥から発掘したことで、あの当時の記憶、GXコンポが放っていた存在感や、そのスピーカーから届く音の迫力が知らないうちに心の奥で蘇っていたせいかもしれない。
現在リビングに置いているDiamond 220も、大きさだけならGXコンポのスピーカーに及ばない。それは確かだけど、テクノロジーの飛躍的な進歩がそのギャップをある程度補ってくれている。前の記事で書いたように、これより大きなスピーカーは宝の持ち腐れになる可能性がある。今の自分には、これだけの投資でこれだけの音が鳴ってくれれば満足だ。この満足がずっと続いてくれるといいのだが。